秋のはじまり・灰色の爪
気温が下がり盛夏よりも虫が元気に飛んでいて自分の身をごまかせないけど周囲は生命が穏やかに喧騒をやめない、穏やかになりたいから自分をごまかしたい、手の爪にネイルポリッシュを塗って、自分をごまかしたい、自分をごまかす為にできることをその割りに知らない。飛んでいる虫ぐらい馴染みたい。馴染めないからごまかしたい。なのに馴染めずごまかせず穏やかになれずつま先立ちしてキンキンしたものに耐えてるかのようにしか、ネイルポリッシュは灰色を塗った、黒色よりやわらかいだろうと思って、なにがやわらかいんだ、なにもやわらかく成れていないくせに。
矮小な人間も多幸になるならそれはもっと俯瞰して見ても多幸なことなの?
お盆
盛夏に空でゴロゴロいって夕立がくると落ち着くのはわたしの何とも関係ないってわざわざのたまうことのわざとらしさに辟易して墓場にいくのをことわりだれもいないと呟く。ひとりでやらずに連帯感の中でよろこんでいる人たちをどうしてか好きになれないまま良い年になり幼年期のおのれと折り合いもつかず消化もうまくならないままそれじゃ許されないようになっていくのだろう。
許されなくてもうまくできないままでまだ救いの残った今にかんがえなくてはならない選択肢のひとつにいつもあるやつ、悲しみかかえてるとでものたまうつもりか? おのれも他者も容易に許すことだけ訓練していて、悲しみかかえてるとでものたまうつもりか? 世の中は他者でしかなかったとでも、悲しみかかえてるとでものたまうつもりか? きゅうり切るように腕でも切り落とすつもりで切るのはきゅうりばかり。悲しみのかたちなどないままなのに。
沈澱
炊飯器のタイマーのセットすら自信なく傷つかず話せたことがない経歴をまた重ねつづけてるままただいろいろ過敏さを自覚していくためだけの流れはなにも写さずそのわりに消えることもない、きらめきを待つのはずっとしていないからと言うことに意味も訊いてるものもない、けど矮小なのでみじめたらしく言う、うごかないものだけが正しいように思える、うごかないものだけが美しいように思える。かなしいことと表せるほど分別して片付いていないものたちばかりを流れて溺れて抱っこしたまま毎夜毎夜ごまかして今夜も明日もごまかしてごまかすことに嫌気がさしたら消えたいとか言ってる、分別し片付けたあとは汚れ物として区別され溺れて沈澱するのをがんばって待っている、
幸福感に裏打ちされた自信を厭うような、傲慢に感じるような、そういう己の沈澱、エアコンのフィルターのゴミ、恥じ入るしかしない己、恥じ入るべきと叱責してもすすまず流れるだけの己、閉じ込めて怖がらせて石でなぐるように釘を打ちきらめいて打撲傷つけられたまま動かず吐息のようにうすく消えたい、なにも期待できず叶わないことのみ折り重なる。
努めていたとしてもいくつかの可能性で沈澱したとしてそれを悔しがるのは道理がちがうのだろうから、なにも発露しない美しさに憧れてしまう。きっとずっと治せない。
習作
俯いて隠した歪めた顔も意味はない
死人のつもりで家を出る
髪振り乱すほどの価値ないって言い聞かせ
今日もまた気に入りの靴履いて
竹の切り口で怪我をした夜、
かわいがられる人間のつもりか
どちらも怖くないふりをして
進む
過ぎるのを待つ なにも過ぎてくれない
笹にまみれてイタチが転がる
目玉を見る意味もわからずみんな目玉を見ている
内面ごまかすような着飾り方する人間
笹にまみれて泣いて
こぞってみんなが寝不足だ
だれの話もわからない
祝福もないことの救いがわからないなら人間じゃないと言ってかすんでしまえ
用なし
笹にまみれて
なんにももともと尊くないことたちを愛でることをつとめて保っていくことは侵してほしくないとうそぶく
こわいことも引き受けて価値もなくいたいのに
矮小